家族に看取られ
家族に看取られ
私が開院してしばらくして在宅治療を受け持った患者さんですが、
「私は病院と比べて自宅では十分な治療ができない事はわかっています。
ただ、自宅にいると家庭の音が聞こえるのです。
自分は動けないので、ベッドから離れられないけれども、朝起きて息子のお嫁さんが食事を作り始める音、孫を起こす音、息子や孫が会社や学校に行ってその後家の掃除や洗濯の音、夕ご飯を作る音、家族が揃って食事をしている音、このような音を毎日聞いているのが楽しいのですよ。
急変時にも家庭では十分対応ができないかもしれませんが、その特は寿命だと考えておりますので、息子や息子のお嫁さんにも心配いらないと説明しています。
その時は先生に看取っていただけたらと思っています。」
と言われました。
この言葉で2つの事を教えて頂きました。
一つめは、家庭の音ということと、二つめは、患者さんを世話する方が息子さんのお嫁さんの場合、「家庭での治療は急変もありますが、患者さんはそのことも良く知っておられて在宅医療を希望されている」という事をはじめに話をしておけば、お嫁さんも安心されるということです。
この方におそわったことは、その後の在宅治療を行うのに、私の基本の一つとなって非常に大切なことだと思っております。