在宅死
在宅死
当院では、平成7年4月にこの地に開院しはじめてから、在宅医療に力を入れて参りました。
通院困難な方や、自宅で最後を迎えることを希望される方に訪問診療、訪問看護という形で医師および看護師が定期的に訪問して患者さんの状態を把握しながら治療を行います。
私の祖父や祖母を母親が介護していた時に、父から、「子供は生まれてから親にオムツの世話になって大きくなるので、子供も親が寝込んだら親のオムツの世話をするものだ。」といわれて子供の時は「人は家で最後を迎えるものだ」と思って育ってきました。
ただ、社会の情勢も変わってきて、核家族となり親と同居されない方もおられ、また、共働き世代が多くなり、平均寿命も長くなったために寝たきりになってから天寿を全うするまでの期間も長くなっていますので、在宅での介護は難しくなってきました。
私の知人の先生が以前に、『施設で生活している方の場合、はじめの間は家族も来所されるが、時間が立つとともに来所の回数が少なくり、また、急変時に家族を呼んだ場合、はじめは連絡をしたら家族がすぐ来院されるが、症状が不安定になり、連絡する回数が頻回になると家族を呼んでも来院されなくなり、最後には「もう急変時に呼んで頂かなくて結構です。死亡が確定してから呼んで下さい。」と言われることがある』と話されました。
これも社会情勢の変化によると思いますが、亡くなっていく患者さんにとっては家族に看取られずに永眠されるので、気の毒に思います。
在宅であったとしても、急変時に家族の方がおられない場合があると言われれば確かにそうですが、少なくとも亡くなる数日前には家族の人にそばにいてもらえると思います。
当院では患者さんが亡くなられる時には、家族の方に周りを取り囲んで頂き、手を握っていただくようにしています。
その上で、医師は自宅で待機させて頂くようにしています。
家族にとって患者さんがなくなる直前には第三者がそばにいないほうが良いと思っています。
このようにして患者さんに永眠していただける在宅診療を今後も頑張っていきたいと思います。